戦後日本と国家神道 Ⅰ

 

第6回:近代日本とタイの国家宗教

矢野秀武×島薗進

タイは欧米諸国に植民地化されることはなかったが、立憲君主制を取り入れつつ、国王の政治的影響力が継続したまま現代に至っている。そして国王が宗教儀礼に深く関与している点で日本と類似している。ただ、日本では1945年以後、国家と宗教の関係が大きく変化し、憲法によって明確に政教分離が規定されたのに対して、タイではそのような大きな変化は起こっていない。タイでは上座部仏教サンガが国家と結合している側面が目立ち、政教分離という点ではなお限界がある。実際、上座部仏教と国王は密接に関わり、それが国政にも大きな力を及ぼしている。民主化が進んできた現代のタイでは、このような上座部仏教の国家宗教的なあり方や、それと密接に関わる国王とサンガの関係はどのように受け止められているのだろうか。タイ上座部仏教の国家宗教的なあり方は、日本の国家神道と比較してどのような特徴があるのだろうか。タイの国家と宗教について長く研究してきた矢野秀武教授と、ともに考えていきたい。(島薗進)


矢野秀武 Yano Hidetake

1966年東京生まれ。法政大学社会学部卒、東京大学大学院人文社会系研究科基礎文化研究専攻(専門分野:宗教学・宗教史学)博士課程修了。博士(文学・東京大学)。駒澤大学教授。「宗教と社会」学会会長、駒沢宗教学研究会理事長などを歴任。日本宗教学会賞・公益財団法人国際宗教研究所賞・パーリ学仏教文化学会特別功労賞を受賞。現代タイの上座部仏教・宗教運動、上座部仏教圏の国家と仏教の関係などを研究。著作に『現代タイにおける仏教運動―タンマガーイ式瞑想とタイ社会の変容』『国家と上座仏教―タイの政教関係』、共編著『アジアの社会参加仏教―政教関係の視座から』、タイ語教科書の邦訳『仏教―中学3年生』。

島薗進 Shimazono Susumu

宗教学者/東京大学名誉教授、NPO法人東京自由大学学長、大正大学客員教授。1948年生。東京大学大学院博士課程・単位取得退学。東京大学大学院人文社会系研究科・教授、上智大学大学院実践宗教学研究科・教授、上智大学グリーフケア研究所所長を経て、東京大学名誉教授、NPO法人東京自由大学学長、上智大学グリーフケア研究所・客員所員、大正大学・客員教授。専門は近代日本宗教史、宗教理論、死生学、生命倫理。著書:『宗教学の名誉30』(ちくま新書、2008年)『国家神道と日本人』(岩波書店、2010年)、『日本人の死生観を読む』(朝日新聞出版、2012年)、『ともに悲嘆を生きる』(朝日新聞出版、2019年)など。


概要

日程  2024年5月3日(金)

時間  14:00~16:30

受講料 【オンライン(見逃し配信あり)】
    一般:2500円

      会員:2000円

    学生:1500円

    会員学生:1000円
※見逃し配信はオンライン参加のお申し込みをされた方全員に対し、講座終了後から数日内に、YouTubeの限定公開のリンクをお送りいたします


お申し込み

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