戦後日本と国家神道 Ⅰ

 

第2回:「国家神道と政教分離」

駒村圭吾

コメンテーター:松平徳仁 

司会:島薗進

明治体制を特徴づけた国家神道は、敗戦後、神道指令と日本国憲法によって「解体」された。しかし、戦後社会の進展において、国家神道なるものが静かにそして着々とよみがえりつつあるとの指摘が宗教学者たちからなされている。これはいったいどういうことなのだろうか。解体されたはずの制度体が亡霊のように戦後社会に浸潤しつつあるのは、要するに、解体されたと見せかけて社会の中に深く潜航したにすぎなかったのか、解体された残骸を誰かが寄せ集めてそれに新しい生命を吹き込んでいるのか、はたまた、古くて新しい精神的基盤が国民の間に構築されつつあるのか。これらの動向を受容すべきかどうかを議論する前に国家神道復活と見立て得る現象を産み出したものは何かを同定しておきたい。

 

この大きな論題を、戦後憲法の一大特徴である政教分離原則の運用に照準して考察したい。扱うのは最高裁判所の判決、この分野のランドマークである津地鎮祭事件判決である。この判決の中に、そもそも宗教概念を拡散させ、国家神道なるものを徘徊させ得る論理と概念が用意されていたことを私たちは知るだろう。さらに、国家神道の復活を可能にするのは、宗教とは別の回路、つまりスピリチュアリティの回路であり得ることを展望したい。


駒村圭吾 Komamura Keigo

憲法学者/慶應義塾大学法学部教授。1961年生まれ。プリンストン大学・ハーヴァード大学研究員(2008年~2010年)。主要業績として、『憲法訴訟の現代的転回』(日本評論社)、『憲法改正の比較政治学』(弘文堂)、『戦後日本憲政史講義』(法律文化社)、Japanese Constitutional Revisionism and Civic Activism (Lexington Books) 等がある。

松平徳仁 Matsudaira Tokujin

1969年生まれ。憲法学・比較憲法学専攻。

東京大学法学部第2類卒業。ワシントン大学ロースクール修了(法学修士)、東京大学大学院法学政治学研究科博士課程単位取得退学。現在、神奈川大学法学部教授。著書に『東アジア立憲民主主義とそのパラドックス』(羽鳥書店、2021年)。

島薗進 Shimazono Susumu

宗教学者/東京大学名誉教授、NPO法人東京自由大学学長、大正大学客員教授。1948年生。東京大学大学院博士課程・単位取得退学。東京大学大学院人文社会系研究科・教授、上智大学大学院実践宗教学研究科・教授、上智大学グリーフケア研究所所長を経て、東京大学名誉教授、NPO法人東京自由大学学長、上智大学グリーフケア研究所・客員所員、大正大学・客員教授。専門は近代日本宗教史、宗教理論、死生学、生命倫理。著書:『宗教学の名誉30』(ちくま新書、2008年)『国家神道と日本人』(岩波書店、2010年)、『日本人の死生観を読む』(朝日新聞出版、2012年)、『ともに悲嘆を生きる』(朝日新聞出版、2019年)など。


概要

日程  2022年12月10日(土)

時間  14:00~16:20

受講料 【オンライン(見逃し配信あり)】
    一般:2500円

      会員:2000円

    学生:1500円

    会員学生:1000円
※見逃し配信はオンライン参加のお申し込みをされた方全員に対し、講座終了後から数日内に、YouTubeの限定公開のリンクをお送りいたします


※この講座は終了いたしました