【宗教を考える学校】 2024年度

 

第3回「生命誌が見出した現代のアニミズム

中村桂子×鎌田東二×島薗進

 

宇宙に46億年前に生まれた地球上で今を生きる私は、40億年ほど前の海にいた始原細胞(DNAをゲノムとする)から進化してきた。地球上の生きものはどれも同じ祖先から生まれた仲間だ。生老病死を組み込みながら多様な生きものを生み出してきた進化の過程を追うと、「私たち生きものの中の私」、つまりフラットな関係の中の私が見えてくる。その中で、「生きる意味」を問いながら「生きる喜び」を見出していくのが生きるということだ。生命誌が見出した答えである。

ブリコラージュ(縁とも言える)で生まれる生きものを支えるのは、二項対立では説明できない「矛盾が生み出すダイナミズム」である。このような存在のあることの「不思議」が呼び起こす驚き、畏敬は古代のアニミズムの底流につながる。生きものとしての人間本来の姿がここにあると思っている。

生命誌でのこの「不思議」は、神、とくに絶対神にはつながらない。宇宙に生まれたこの「不思議」の中で生き、宇宙に戻るのである。

(記:中村桂子)


中村桂子 Nakamura Keiko

生命誌研究者/JT生命誌研究館名誉館長。1936年東京生れ。東京大学理学部化学科卒。同大学院生物化学博士課程修了。理学博士。三菱化成生命科学研究所部長、早稲田大学教授、東京大学客員教授、大阪大学連携大学院教授を歴任。「人間は生きもの」という事実を基本に生命論的世界観を持つ「生命誌」を構想。1993年「JT生命誌研究館」を創設し2002年館長、現在名誉館長。著書に「科学者が人間であること」(岩波新書)、「科学はこのままでいいのかな」(ちくまQブックス)、「中村桂子コレクション8巻」(藤原書店)「人間はどこで間違えたのか」(中公新書ラクレ)など。

鎌田東二 Kamata Toji

宗教哲学・民俗学/京都大学名誉教授、天理大学客員教授。

1951年徳島県阿南市桑野町生まれ。國學院大學文学部哲学科卒業。同大学大学院博士課程単位取得中途退学。岡山大学大学院医歯学総合研究科社会環境生命科学専攻博士課程単位中途退学。宗教哲学・民俗学・比較文明学・ケア学専攻。博士(文学・筑波大学)。京都大学名誉教授。天理大学客員教授。石笛・横笛・法螺貝奏者。フリーランス神主・神道ソングライター・吟遊詩人。著作に『神界のフィールドワーク』『翁童論』四部作、『宗教と霊性』『呪殺・魔境論』『神と仏の出逢う国』『現代神道論』『世直しの思想』『世阿弥』『言霊の思想』、サードアルバム『絶体絶命』など。

島薗進 Shimazono Susumu

宗教学者/東京大学名誉教授、NPO法人東京自由大学学長、大正大学客員教授。1948年生。東京大学大学院博士課程・単位取得退学。東京大学大学院人文社会系研究科・教授、上智大学大学院実践宗教学研究科・教授、上智大学グリーフケア研究所所長を経て、東京大学名誉教授、NPO法人東京自由大学学長、上智大学グリーフケア研究所・客員所員、大正大学・客員教授。専門は近代日本宗教史、宗教理論、死生学、生命倫理。著書:『宗教学の名誉30』(ちくま新書、2008年)『国家神道と日本人』(岩波書店、2010年)、『日本人の死生観を読む』(朝日新聞出版、2012年)、『ともに悲嘆を生きる』(朝日新聞出版、2019年)など。



概要

日程  2024年9月7日(土)

時間  14:00~16:30

オンライン配信
受講料 一般:2500円

      会員:2000円

    学生:1500円

    会員学生:1000円


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